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ガンマ線: 高電圧供給回路

フォトマルには高電圧を印加しますが、その回路は次のようになっています。

回路図の左下にあるC10940が高電圧発生モジュールです。このモジュールは浜松ホトニクスの製品で、入力電圧は5V、出力電圧は0~1200Vまで可変できます。電圧の制御は、VCONT端子に0~1200mVを加えるとその1000倍の電圧が出力されます。GeoGamma220ではフォトマルには700V程度の電圧をかけています。そのための制御電圧は、基準電圧IC ADR441の出力が2.5Vで、その電圧を固定抵抗とポテンションメータで分圧して得ています。そして、マイクロコントローラSTM32F207のDAC出力をダイオードをとおして加える事で高電圧を可変できるようにしています。また、出力された高電圧は20MΩと33kΩの抵抗で分圧し、STM32F207のADCで電圧を測定するようになっています。

 

高圧回路

 

C10940は次の写真の左下に映っていますが、小型で5Vで動作し、温度範囲も-20℃~50℃で使用できるので、使いやすい高電圧電源です。この基板にはGPSモジュールなど間欠的に電流を多く消費するモジュールがあり、5Vにノイズが乗ります。そのため、コーセルの5V-5VDCDCコンバータ SUS1R50505を通してC10940に5Vを供給しています。このコンバータを入れないと、スペクトルの30keV以下にノイズによるカウントが増える場合がありました。

kiban

ガンマ線:ベースラインシフト補正

使用しているフォトマルは陰極接地タイプですので、カップリングコンデンサによるベースラインシフトが起きます。その影響は30keV付近の特性X線のスペクトルの位置や形状に影響を与えます。ガンマ線が強くなると特性X線のピークチャンネルは小さく、スペクトル上では左に移動していき、測定限界以下になるとピークがなくなります。

この問題を解決するのに、今回はデジタル的な補正を行いました。ベースラインシフトの大きさはフォトマルに流れる電流に比例しますので、フォトマルに流れる電流を見積もります。その方法として、プロセッサでガンマ線パルスが観測される度にチャンネル番号を加算していきます。一定時間毎の合計はフォトマルに流れる電流に比例すると考えられますので、その合計に応じてチャンネル番号を補正します。

この方法により、線量率が10uSv/h程度以下であれば問題ないレベルまで補正ができました。それ以上の強度になると特性X線のピークのカウント数が減少し、最後はなくなってしまいます。

ガンマ線: 積分回路とノイズ

30keV以下のパルスを精度良く検出するには回路のノイズを出来るだけ少なくする必要があります。ノイズ対策として、積分回路のオペアンプ出力をオシロで観測すると20mV程度のホワイトノイズが観測されました。回路を見ても発生源が分らなかったので、片っ端から部品を交換し、関連する部品を全部交換してもノイズが無くなりませんでした。それで再度回路を見ていて気が付いたのは積分回路に入っている1MΩの抵抗でした。積分回路

この抵抗は、雑音や非常に弱い光パルスによりコンデンサが充電された電荷を放電させるもので、この抵抗が無いとすぐに出力が飽和して機能しなくなります。一方、この抵抗は光パルスの積分電圧を時間と共に下げますので、AD変換を行っている間は影響が無いような値にする必要があります。そのため、1MΩの値にしていました。

この抵抗が大きすぎるのではないかと思い、100kΩにしてみました。そうしたところ、今まで出ていたノイズが嘘のようになくなりました。

何故、ノイズが出なくなったか原因を探るため、積分回路の交流特性を調べました。その結果が次のグラフです。ゲインは70dB以上もあります。これだけのゲインがあるとホワイトノイズが出力に現れても不思議でもありません。

積分回路1MΩ

また抵抗を100kΩにした場合は次のグラフになります。ゲインはマイナスになりました。100kΩにしてノイズが減ったのは、積分回路のアンプとしてのゲインがマイナスになったためでした。積分回路100kΩ

100kΩにするとAD変換中の電圧降下が心配ですが、オシロで見たところ殆ど影響はなく、スペクトルでも影響は確認できませんでした。

 

ガンマ線:低エネルギー領域のバックグラウンド

30keV以下のエネルギー領域でバックグラウンドがどのようなスペクトルになるのか調べました。フォトマルにかける電圧を高くし、低エネルギーまでスペクトルを表示するようにしました。その結果が次のグラフで、Cs137を参照のため重畳しています。

Cs137_900V
この画面の低エネルギー部分を拡大したのが次のグラフです。

Cs137_900V_2
このグラフのピークはCs137の32keVで、横軸のチャンネル数を3で割るとおおよそのエネルギーが出ます。グラフでは20チャンネル即ち7keV程度から測定できています。次のグラフはCs137の重畳を行わない場合のものです。

bg_900V_2
このグラフから7keV~30keVの間はほぼフラットなカウント数である事が分かります。このようなレスポンスになるのは一般的な事なのか、この測定器特有なのかは調査中です。カウントされているパルスはフォトマルの雑音である可能性もあります。