カテゴリー別アーカイブ: 走行データ

ガンマ線:線量率の乱高下

GeoGamma220を使って測定したデータを調べていると時々首を傾げる事があります。次のデータは常磐自動車道を7月の始めに走った時のものです。joban1

線量率が0.3μSv/hから2μSv/hの間で乱高下しています。トンネルに入った時などはこのような急な変化をしますが、地図で見るとこの辺りはトンネルがありません。衛星写真上にプロットしたのが次の画像です。joban2

地形の影響かと思い、地形の分る地図上でも確認しましたがそうでもなさそうです。何故かと思い衛星写真を拡大したりして見ていてハタと気がつきました。joban3
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この画像を良くみると道路の色の濃淡と線量率を表す色に関連があります。道路の色が薄いところは線量率が高く、濃い部分は低くなっています。乱高下の原因は道路の舗装状態のようです。

 

ガンマ線:バックグラウンド(新幹線:岡山-新大阪)

GeoGamma220で新幹線の岡山―新大阪間を測定したデータです。測定器を列車の床の上に置き窓際にGPSアンテナを置いて測定しました。

岡山ー新大阪
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この区間はトンネルが多く、計数率が大きく変化します。六甲トンネルと神戸トンネルは区間が長く、同じトンネル内でも計数率が10,000程度の区間と6,000程度の区間の2種類あります。この違いは地質によるものと考えられます。地質図Naviでトンネルの地質を調べると、計数率が高い区間は花崗岩、低い区間は珪長質深成岩類の分布と概ね一致します。
赤穂市周辺の帆坂、赤穂、相生トンネルの計数率も高いですが、このトンネルの地質は花崗岩でなく、非アルカリ珪長質火山岩類となっています。

ガンマ線: バックグラウンド(道路:大阪-名張)

GeoGamma220を車に載せ、大阪市から高速道路で名張市まで走行テストを行いました。大阪市と名張市は距離が50km程度離れていますが、その間で計数率に大きな変化はありませんでした。

新大阪_名張_周波数スペクトル画像をクリックすると拡大できます。

下のグラフは計数率で1秒毎のカウント数です。中央のグラフは計数率の周波数スペクトルです。周波数スペクトルは、計数率の変化の仕方を知るために、FFTで求めたものです。周波数スペクトルには特徴的なピークはなく、システムの不具合などによる変な固有振動は無い事が分ります。また0.05Hz以上の周波数でほぼ一定のレベルとなり、計数率は雑音のような変化をしている事も分ります。

ガンマ線: 走行データ(JR神戸線)

GeoGamma220を鞄に入れ、JRの列車で走行テストを行いました。区間はJR新大阪駅から芦屋駅の間です。

計数率は、駅構内では複雑に変化しますが、ホームに立つと一定します。列車に乗り込むとホームでの計数率の60%程度に下がります。下がる理由としては、測定器と地面の間が列車の台車分だけ離れるのと、列車の床(鉄板など)による減衰が考えられます。

新大阪から芦屋駅までの間では計数率はほぼ一定ですが、若干、西に行くに従い増加しています。途中、河川では計数率は大きく下がります。JR新大阪_芦屋画像をクリックすると拡大できます。

後日分った事ですが、新大阪駅のホームの直前に鋭いピークがあります。このピークの原因が当初分らず、駅構内の何かの施設が花崗岩でできているのだろうと思ってましたが、それは階段だと言う事が分りました。友人に教えてもらって、調べたところ確かに御影石でできた階段でした。階段の場合、斜めになっていて測定器に入るガンマ線量も床とは違って多くなるのでピークができるのだと思われます。

(小林一英)

ガンマ線: 走行データ(新幹線:名古屋-東京)

昨年(2012年6月)にGeoGamma220とほぼ同じ構成(2インチNaI+フォトマル)の測定器で測定したデータです。測定器を新幹線の床の上に置き窓際にGPSアンテナを置いて測定しました。名古屋-東京(2012)画像をクリックすると拡大します。

下のグラフで、左端が名古屋、右端が東京です。名古屋から段々にガンマ線強度は下がり、豊橋から平塚あたりまで最低ラインが続きます。途中大きく強度が上がっているのはトンネルです。そして平塚から東京にかけて、アップダウンはありますが、強度が上がていきます。この原因としては、中央右側のスペクトル画面で、わずかですがセシウム137の部分で盛り上がりがあるのと、過去の測定データ(「日本における地表γ線の線量率分布」を見ても平塚から東で強度が強くなる傾向が見られない事から、福島の事故の影響だと推測されます。ただ、影響があると言っても強度は関西の阪神間より弱いレベルです。

(小林一英)

ガンマ線: 走行データ(新幹線:新大阪-名古屋)

昨年(2012年6月)にGeoGamma220とほぼ同じ構成(2インチNaI+フォトマル)の測定器で測定したデータです。測定器を新幹線の床の上に置き窓際にGPSアンテナを置いて測定しました。新大阪ー名古屋(2012)

下のグラフで、左端が新大阪、右端が名古屋です。4箇所で計数率が高く、右側の名古屋に近い所3箇所で計数率が低くなっています。前者はトンネル、後者は木曾三川で、原発事故の影響のない地域ではトンネルで高く、河川で低くなります。

4本のトンネルのうち大阪寄りの3本はほぼ同じ計数率で、名古屋よりの1本(関ヶ原トンネル)では他より高くなっています。これは関ヶ原トンネルの地質が他の3本のトンネルと違うためだと考えられます。

左端で階段上に変化しているのは、低い部分は新大阪駅の構内で、列車が新大阪駅の東口を過ぎた辺りから高くなります。構内で低いのは列車の位置が地面から高い位置にあるためだと考えられます。

(小林一英)

ガンマ線: 走行データ(山)

測定器(GeoGamma220)を車に載せて六甲山(兵庫県)を走ってみました。その時のデータを専用の表示ソフトで表示したのが次の図です。

六甲山

下側グラフは横軸が時間、縦軸は計数率(cpm)で、芦屋市街からスタートし六甲山の頂上にある六甲ガーデンテラスまでのデータです。X軸の値が800付近で一番計数率が高くなっていますが、この付近は谷筋で、計数率が高いのは尾根に出るまで続きます。青の十字カーソルの点が一番値が低くなっていますが、この付近は完全な尾根筋で道路の両側が開けています。何故、谷筋でガンマ線量が高く、尾根で低いのかですが、測定点の周りがどれだけ岩石や土に囲まれているかという事だと考えられます。

走行する前のイメージでは漠然と頂上が一番線量率が高いだろうと思ったのですが、実際のデータは逆でした。ガンマ線は目に見えないので性質を理解するには色々体験する事が必要だと思いました。

(小林一英)

ガンマ線: 走行データ(湾岸)

測定器(GeoGamma220)を車に載せて、走行テストを行いました。ルートは阪神間の海と山で、西宮周辺の湾岸と六甲山です。テストには、比較のため、TCS-172Bという福島ではデファクト的なサーベイメータでの測定値も取得するようにしました。写真の左側がTCS-172Bでシンチレータは1インチです。右側はGeoGamma220でシンチレータは2インチで、ガンマ線の計数率感度は理論的には8倍です。

IMG_0979

TCS-172Bからはフルスケールで10mVのアナログ電圧が出ていますので、その出力をGeoGamma220のアナログ入力に接続して、同時にデータをサンプリングしています。TCS-172Bの測定パラメータはレンジは0.3μSv/h、時定数は10秒で行いました。

湾岸を走行した結果を専用の表示ソフトで表示したのが次の図です。地図上の青の線が走行ルートで、下側のグラフがGeoGamma220の計数率(cpm)、右側のグラフがエネルギースペクトルです。下側のグラフを見ると値が3か所でドロップしているのが分かります。図をクリックすると拡大され変化しているのが良くわかります。

湾岸

この3か所が何故低くなっているのかは、計数率を色分けして地図にプロットすると分かります。それが次の図で、色は計数率が高いほど暖色系、低いほど寒色系です。

TCS172Bとの比較

この地図を見ると3か所、青色の部分があり、そこはいずれも橋の部分である事が分かります。表示ソフトではグラフをクリックするとその値に対応する地点が地図上に表示されますので、値が下がっているのは橋の上であるという確認ができます。

下側のグラフで赤の線はGeoGamma220の値で、青の線はTCS-172Bの値です。横軸は時間、縦軸は計数率で、両者が同じような位置に表示されるようにTCS-172Bの値は倍率をかけています。青のグラフを見ると、赤に比べ、値の変化がなだらかで、変化量も少なく、変化する位置が橋の位置とずれています。両者のグラフの違いは1点の測定に要する時間が青(TCS-172B)は10秒で、赤(GeoGamma220)は1秒である事が主な原因だと考えられます。TCS-172Bで10秒かかるのは、この地域での線量率が0.05μSv/h程度で1インチのシンチレータでは計数率が低く、1秒では値のばらつきが大きくなりすぎるからです。

橋の上でガンマ線が弱くなるのは、ガンマ線を発生している岩石や土から距離が離れるのと水による減衰のためだと考えられます。

 (小林一英)