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ガンマ線:パルス間隔(指数分布)

以前(2013年9月13日の投稿)、ガンマ線のパルスをオシロで観測した時の分布について書きましたが、より詳しく調べました。
ガンマ線のパルスを一定時間カウントすると、その数はばらついて一定の値ではありません。カウント数が非常に多いとばらつきはガウス分布になりますが、カウント数が少ない時はポアソン分布になります。また、パルスの時間間隔は指数分布になります。今回、この指数分布になっている事を確認しました。

観測方法は次のとおりです。
1.フォトマルからの電流を50Ωの抵抗で電圧に変換し、10倍のアンプで増幅した後、0.2Vの閾値でディスクリし、500nsecの幅、電圧1Vのパルスに変換します。
2.そのパルスをカウンタ(53230A)に入力し、パルス間隔を測定し、ヒストグラムを作成します。5msecの間をビン幅50μsecで100個のビンに振り分けカウントします。

次のグラフは2インチシンチレータ、Cs137、約1μSv/h程度の線量率のもとで、100000個のパルスについて測定した結果です。
expdistribution
縦軸は%表示で、グラフは、ほぼ理論どおりの、指数関数のカーブになっています。指数分布(λ Exp(-λx))のλは0.04で、時間間隔の平均値は1/λ=25(1.25msec間隔)となります。0から平均値までの累積確率は0.63ですので、多くのパルスは平均より短い間隔で発生しています。累積確率が半分になるのはx=17(0.85msec)程度の時で、1秒間に平均1176個のパルスが発生している事になります。

グラフからも分かるように、一つのパルスが発生した後、すぐに次のパルスが発生する確率が高いので、ガンマ線の検出システムではデッドタイムを短くする事が重要です。デッドタイムがどの程度の誤差になるかですが、今回の測定結果からは、50μsecあると1μSv/hでは約4%の数え落としが発生すると推定できます。この誤差は線量率が高くなるに従い大きくなるので線量率毎の補正が必要となります。

ガンマ線:温度補正

NaIシンチレータの光強度およびフォトマルのゲインは温度により大きく変化します。そのため、温度補正をしないとCs137のピーク位置は温度によりずれてきます。次のグラフはCs137のピークが温度によりどう変化するか測定した結果です。温度を-20℃~50℃の間で変化させその時のCs137の662keVのピークチャンネルを測定しました。Cs137_tempチャンネルは50℃で465の最低となり、-10℃で589の最高となります。その差は124チャンネルで、約150keVに相当する変動幅です。

この変動を抑えるためにGeoGamma220ではフォトマルに供給する電圧を温度により変化させて、シンチレータとフォトマルの総合的なゲインが一定になるようにしています。そのため、Cs137のピークが移動しないためにフォトマルにかける電圧を測定したのが次のグラフです。HighV_temp

また、この電圧を発生させるためにSTM32のDACにセットする値(0~4096)のグラフも求めておきます。それが次のグラフです。HighV-DAC
以上の測定により、ディテクタの温度とDACにセットする値が次の数式で表されます。
V = -6E-05 * t * t * t + 0.0098 * t * t + 0.2925 * t+ 695.21 tは温度(℃)
DAC = 54.922 * V – 36296

この数式で補正を行い、Cs137のピークの変動を測定したのが次のグラフです。このグラフは温度を-20℃~10℃まで10℃毎に変化させ、その後恒温槽の電源を切り自然に30℃まで温度上昇させたものです。青のラインが温度、ピンクが電圧、黄色がCs137のピークチャンネルです。 -20_10step_30poweroff

次のグラフは温度を30℃~50℃~0℃と変化させたものです。30_50_0以上の結果では-20℃~50℃の範囲でCs137のピークチャンネルは456~465の9チャンネルの変動幅で、割合にすると約±1%に収まるようになりました。

グラフでは温度が変化した後、少し遅れて電圧が変化しています。これは電圧を決定する温度として、過去40分間の平均温度にしているためです。測定用のサーミスタはディテクタの外側ケースに貼り付けてあり、その温度がシンチレータの内部まで伝わるには時間がかかるので、その時間を考慮しています。

なお、上記の数式はテストしたディテクタにのみ適用できるもので、シンチレータやフォトマルが変われば変更する必要があります。

ガンマ線: 走行データ(新幹線:名古屋-東京)

昨年(2012年6月)にGeoGamma220とほぼ同じ構成(2インチNaI+フォトマル)の測定器で測定したデータです。測定器を新幹線の床の上に置き窓際にGPSアンテナを置いて測定しました。名古屋-東京(2012)画像をクリックすると拡大します。

下のグラフで、左端が名古屋、右端が東京です。名古屋から段々にガンマ線強度は下がり、豊橋から平塚あたりまで最低ラインが続きます。途中大きく強度が上がっているのはトンネルです。そして平塚から東京にかけて、アップダウンはありますが、強度が上がていきます。この原因としては、中央右側のスペクトル画面で、わずかですがセシウム137の部分で盛り上がりがあるのと、過去の測定データ(「日本における地表γ線の線量率分布」を見ても平塚から東で強度が強くなる傾向が見られない事から、福島の事故の影響だと推測されます。ただ、影響があると言っても強度は関西の阪神間より弱いレベルです。

(小林一英)

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